DFAアワードは2003年に創設され、創意香港を前身とする文創産業発展司(CCIDA)が2009年よりリードスポンサーを務めています。アジアに特化し、デザインのランドスケープに永続的なインパクトをもたらした卓越した個人やプロジェクトを称え、一連のアワードプログラムを授与しています。2024年の主な受賞者は以下のとおりです。DFA ライフタイムアチーブメント賞(DFA LAA) - 隈研吾氏、DFAデザインリーダーシップ賞(DFA DLA) - 伊部菊雄氏、DFA世界優秀中華デザイナー賞(DFA WOCD) - ティノ・クワン(Tino KWAN)氏、DFAデザイナー・オブ・ザ・イヤー賞(DFA DOY) - 太刀川英輔氏。いずれも、デザインの秀逸さと革新性においての卓越性が認められました。
HKDCの会長であるエリック・イム(Eric Yim)教授は次のように述べています。「本年のDFAアワード受賞者は、美的な観点を超越したデザインが社会を変える強力なツールになることを示しました。彼らの作品は、私たちに刺激を与えてくれるだけでなく、グローバルな課題に対処するうえでデザインが果たす役割について問いかけ、私たちに熟考を促すものです。先見的な功績により、さらに持続可能でつながりのある世界への道をひらいた受賞者の皆さまに、心よりお祝いを申し上げます。本年は、現代の複雑な社会的課題の解決にデザインを活用するという点において主導的な役割を果たした個人を称えるDFAデザイナー・オブ・ザ・イヤーが新設されました。本アワードは個人の功績のみに焦点を当てるものではなく、アジアを拠点とするデザイナーとして、デザインのランドスケープに対し文化的観点から大きな変革をもたらしたという点にも焦点を当てています。」
DFA ライフタイムアチーブメント賞2024(DFA LAA)
隈研吾
隈研吾建築都市設計事務所
設立者
世界的に著名な建築家の隈研吾氏は、自然、技術、人間らしさの関係性を再定義することによって建築領域に確たる影響を与えました。1990年に隈研吾建築都市設計事務所を設立して以来、建築と周囲の環境をひとつながりに融合させるというビジョンを実現してきました。自然素材の利用とヒューマンスケールの空間を重視する設計理念のもと、隈氏が手がけた作品は世界各地でアイコンとしての存在感を放っています。
東京大学名誉教授。過去には慶應義塾大学を含む権威ある機関で教鞭を執っており、現在も若い世代の建築家に向けて知識を伝え続けています。伝統的な日本の美と最先端のテクノロジーの統合という理念のもと、落ち着きと先進性を併せ持つ建築を作っています。幅広い仕事で影響力を持ち、有名な著書に『隈研吾 オノマトペ 建築 接地性』、『自然な建築』、『小さな建築』などがあります。
DFAライフタイムアチーブメント賞2024では、隈氏の先見的なビジョンと世界の空間デザインに対する大きな貢献が評価されました。自然素材とモダンデザインの原則を融合させる隈氏の手腕によって、人々が周囲の環境と関わるうえでの新たな視点がもたらされ、人と環境の間に深いつながりが育まれました。
DFAデザインリーダーシップ賞2024(DFA DLA)
伊部菊雄
カシオ計算機株式会社
時計BU
シニアフェロー
「G-SHOCKの生みの親」として知られる伊部菊雄氏は、1981年からG-SHOCKの開発に取り組み、その商品化に成功して以来、時計産業に変革を起こし続けています。伊部氏が開発したG-SHOCKは、耐衝撃性を持つ時計という画期的な製品でした。万一落とした場合でも衝撃に耐え、完璧な機能性を保持するG-SHOCKは、耐久性のアイコンとして一世を風靡しました。
伊部氏はその後もたゆまず耐久性への追求を続け、1994年からはフルメタルのG-SHOCKモデル「MR-G」の開発に着手し、商品化に導きました。伊部氏の創造性は可能性の枠をさらに広げ、2016年にはドリームプロジェクトを開始しました。このプロジェクトが実を結び、2018年にG-SHOCKシリーズの35周年を記念した18金のG-SHOCKが発表されると、限定35本で販売されたこのモデルは予約のみで完売となりました。現在、世界各地の1000軒を超えるカシオの店舗でG-SHOCK製品が販売されており、G-SHOCKの売上本数は世界累計で1億本を超えています。さらに、グローバル文化の発展に寄与したことを認められ、G-SHOCKは重要科学技術史資料として登録されました。
DFAデザインリーダーシップ賞2024では、伊部氏のデザイン界に対する並外れた貢献が評価されるとともに、イノベーションへのたゆまぬ追求、粘り強さ、グローバルファッションとプロダクトデザインに確たるインパクトを残したことが認められました。
DFA世界優秀中華デザイナー賞2024(DFA WOCD)
ティノ・クワン (Tino KWAN)
ティノクワン・ライティング・コンサルタンツ
プリンシパル・コンサルタント
国際的に高い評価を受けている照明デザイナーのティノ・クワン氏は、照明デザイン分野のパイオニアとして45年以上活躍しています。1979年にロンドンにティノクワン・ライティング・コンサルタンツを設立して以来、優れた実績を積み重ねており、各国の商業施設、客船、星付きの豪華ホテル、カジノ、ミシュランガイド掲載のレストラン、邸宅などを手がけています。
デザイン活動のほか、清華大学などのデザイン教育機関での講義を通じて積極的に経験を共有し、影響力を広げています。これまでに、中国室内装飾協会(CIDA)により優れた10名のデザイナーのうちの1人に選出されたほか、中国照明学会(CIES)、日本照明学会(IEIJ)、北米照明学会(IESNA)による賞の受賞、中国のインテリアデザインにおけるホール・オブ・フェイムへの殿堂入りを果たし、クワン氏がデザイン業界に強いインパクトをもたらしたことが示されています。
DFA世界優秀中華デザイナー賞2024では、クワン氏が照明デザインにおいて先駆的なアプローチを行ったこと、未来を担う人材の育成に尽力したことが評価されました。 照明を用いて空間を変容させる手腕でクワン氏は業界のアイコン的存在となり、建築環境における私たちのエクスペリエンスの可能性を広げ続けています。
DFAデザイナー・オブ・ザ・イヤー賞2024(DFA DOY)
太刀川英輔
NOSIGNER
設立者およびCEO
NOSIGNER設立者の太刀川英輔氏は、デザイン領域におけるビジョナリーとして、自身の仕事を通して気候変動や防災対策などのグローバルな社会問題に献身的に取り組んでいます。「進化思考」をコンセプトに掲げ、生物学的進化とクリエイティブプロセスを比較して論じ、これまでにDFA大賞(Grand)2件を含む100以上のデザイン賞を受賞しています。
太刀川氏は、2021年より公益社団法人日本インダストリアルデザイン協会(JIDA)の理事長を最年少で務めるほか、2023年には世界デザイン機構(WDO)の理事に選任されました。現実世界で起きている問題の解決にあたってデザインが担う役割を再定義することに尽力してきました。太刀川氏が携わる著名なプロジェクトには2025年大阪・関西万博の日本館があるほか、「DESIGNS FOR THE NEXT 100YEARS」展ではポジティブな社会的インパクトを作り出していくという姿勢が改めて示されました。著書の『進化思考』、『デザインと革新』では、サステナブル・デザインにおけるリーダシップについての考えが述べられています。
DFAデザイナー・オブ・ザ・イヤー賞2024では、社会を変革するツールとしてデザインを用いる太刀川氏の革新的なアプローチが評価されました。太刀川氏の作品は従来の思考に問いを投げかけ、より明るくサステナブルな未来に向けての希望とソリューションを提示しています。
DFAアジアデザイン賞2024(DFA DFAA)
DFAアジアデザイン賞2024は、アジアへ大きなインパクトをもたらした優れたデザインの功績を称え表彰するものです。グローバルなランドスケープを包括しつつ、アジアの視点から捉えた広大で深遠なデザイン領域の持つ秀逸さを反映するために、6つの多様な部門を設けています。コミュニケーションデザイン、デジタル&モーションデザイン、ファッション&アクセサリーデザイン、プロダクト&インダストリアルデザイン、サービス&エクスペリエンスデザイン、空間デザインの各部門があり、デザインの今後のあり方を形成していく革新的な作品を総合的な視点から捉えています。
2024年は、215の優れたデザインが表彰され、大賞(Grand)10件、金賞(Gold)20件、銀賞(Silver)43件、銅賞(Bronze)57件、特別賞(Merit)85件が授与されました。これらの賞によりデザインにおける幅広い功績が紹介されるとともに、デザインの持つ創造性と革新性に対する総合的な称賛が示されました。審査においては、多様な地域とデザイン領域で活躍する40名超の専門家が審査員として国際的な審査パネルを構成し、それぞれの専門性を生かして応募作品の評価を行い、厳格で包括的なアセスメントプロセスを確保しました。
HKDCの副会長およびDFAアワード運営委員会の会長であるスティーブ・リョン(Steve Leung)は次のように述べています。「DFAアワード2024に寄せられた力量あふれる数々のプロジェクトを目にし、多くの刺激を受けました。本年は、創造性の枠を超えるだけにとどまらず、インクルーシブ社会や文化の保存など、差し迫るグローバルな課題の対処へ真摯に取り組む姿勢を反映したデザインが非常に幅広く見られました。デザイナーそれぞれがアジアのデザインの未来を形づくると同時に、社会的責任へ向き合い、サステナブル・デザインを実践し、遺産の保護に取り組む姿に勇気づけられました。すべての受賞者の皆さまにお祝いを申し上げます。皆さまの先見性あるデザインは明るい未来への先鞭となります。」
上記の賞とは別に、香港のデザイン界に台頭する新たな才能を後押しすることを目的とした DFA 香港ヤングデザインタレント賞(DFA HKYDTA)の結果も近日中に発表される予定です。HKDCの最新のニュースや今後のイベントにご期待ください。
DFA アワードについて(www.dfaawards.com)
2003年に香港デザインセンターによって創設されて以来、DFAアワードは社会におけるデザイナーの役割を支え、アジアに大きなインパクトをもたらしたリーダーシップや優れたデザインおよびプロジェクトを称賛すると同時に、2005年からは将来性を持った香港の新進デザイナーの表彰を行っています。DFAアワードは、DFA ライフタイムアチーブメント賞、DFA デザインリーダーシップ賞、DFA世界優秀中華デザイナー賞、DFAアジアデザイン賞、DFA 香港ヤングデザインタレント賞の主要6部門からなるアジアのデザイン賞として世界的にも大きな影響力を持つようになっています。
香港デザインセンターについて(www.hkdesigncentre.org)
香港デザインセンター(HKDC)は、香港特別行政区政府の戦略的パートナーとして東洋と西洋が出会う地理的な強みを生かし、デザインによる価値を創出しています。
センターの目標の実現に向け、以下に取り組んでいます。
デザイン文化の醸成
デザインの価値を引き出す機会とステークホルダーの橋渡し
さまざまなデザイン領域における優れた取り組みの促進
文創産業発展司について(https://www.ccidahk.gov.hk)
文創産業発展司(CCIDA)は香港特別行政区政府の文化体育旅行局の管轄のもと創意香港(CreateHK)を前身として、文化とクリエイティブ業界に向けたワンストップサービスと支援を提供するための専門機関として2024年6月に設立されました。香港のアート、文化、クリエイティブ分野を産業として発展させるために有効な環境の整備をミッションとしています。国家的な第14次5カ年計画に基づき、香港を東洋と西洋が出会う拠点として位置づけ国際的な文化交流の場とすることを目的に、人材育成、スタートアップ支援、市場開拓、分野やジャンルを超えたコラボレーションの促進、インダストリー志向の原則に基づいたアート、文化、クリエイティブ分野の発展と産業化の推進、香港をアジアのクリエイティブの中心地として振興させクリエイティブな気風をコミュニティ内に育成することに戦略的に注力しています。