2020年末時点で、17.6GWhものリチウムイオン電池が寿命に達し、2035年時点ではこの数字は140GWhを超える見込みです。しかしながら、現存の電池再利用設備では、使用済み電池の処理や、急速な電化により重要性が高まっている電池材料の回収を行うためには最適化されていないのが現状です。また、これまで、電池再利用におけるイノベーション活動の大半は、持続不可能な量の電力や化学物質を必要とし、カソード活物質の回収率も低い状況でした。ただし、先端技術調査を専門とする米調査会社ラックスリサーチによると、新たな処理方法が開発されつつあり、大規模な電池再利用が可能になりつつあると指摘しています。
ラックスリサーチは、新しい報告書、『Clear-Cut Opportunities in Battery Recycling(電池再利用における明確な事業機会)』にて、化学品・材料メーカー、カソードメーカー、自動車OEMにとって電池再利用分野でどのような事業機会が存在するかを分析し、電池バリューチェーンのどのような部分に主要なスタートアップ企業が存在するかをまとめました。
今回の調査にてリチウムイオン電池再利用における事業機会を特定するために、ラックスリサーチは次のようなポイントを取り上げました。
効果的な電池再利用ストリームを構築するために必要な技術とは?
電池再利用自体は新しい技術分野ではないものの、リチウムイオン電池の再利用に関連したイノベーションは昨今活発化しています。この分野における技術開発企業は、主に、電池材料の回収率を高め、より高純度の材料を回収し、リサイクル製品の価値最大化を目指しています。
企業は、新しいリサイクル技術をどのように活用し、処理規模の拡大を実現しているのか?
リサイクル技術の選択肢が広がるにつれ、各技術は、上市に向け、独自の方針を採用する必要があります。リサイクルプロセス技術を開発する企業は、どの化学物質を再利用することが可能か、および得られる生成物が何であるかを考慮しなければなりません。
商用バッテリーの再利用市場へと参入するにあたり、企業はどのような事業戦略を検討すべきか?
電池再利用市場への参入を目指す企業には、複数の参入方法が考えられます。電池バリューチェーン上の全ての企業にも同じことが言えますが、電池再利用市場へこれから参入しようという企業にとって、戦略提携を検討することは重要です。
ラックスリサーチのアナリストで本調査を担当したAbhirabh Basuは次のようにコメントしています。
『リサイクル技術開発の推進要因は数多くあります。電池の廃棄に関連する環境面でのリスクを回避するため、政策面で多くの取り組みが行われるようになり、また再利用市場の経済的発展は、電池バリューチェーン上のほとんどすべての企業に利益をもたらすこととなります。さらに、リサイクル業者が回収率を98%上昇させると主張するほど、リチウムイオン電池のリサイクル技術は近年向上しています。
活発なイノベーション活動を促進する要因が存在するにもかかわらず、過去数年間で電池の再利用は、技術面および経済性の両方により依然として限定的でした。電池の再利用は、これまでコバルト含有量の多い家電製品の電池が中心でしたが、バッテリー式電気自動車向けの車載電池がリチウムイオン廃棄物ストリームを支配し始めるにつれて、リサイクル業者は多様なカソード化学物質を大規模に処理する必要があります。電池再利用分野における継続的なシフトは、リチウムイオン電池バリューチェーン上の全ての関連企業に影響を及ぼすことになるでしょう。』
本調査の詳細は、エグゼクティブサマリーをダウンロードしてご確認ください。