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ロボットタクシー:従来のタクシーやライドヘイリングには破壊的な影響を与えるものの、自動車所有を代替するには至らない見込み(ラックスリサーチ)

  • 2021-10-28 14:35
  • ACROFAN=Newswire
  • newswire@acrofan.com
ロボットタクシーは、現在、自動運転技術を開発する企業が最も注目している分野であり、多くの企業は、最終的には自動車保有の代替、または少なくとも大幅な減少につながると想定しています。自動運転技術の開発者、特にレベル4の自動運転に焦点を当てている企業の多くがモビリティサービスを第1の用途として焦点を当てています。その理由として、タクシーやライドヘイリング市場はすでに実証されている分野であるだけでなく、高い労働コストが高い価格を生み出す市場でもあり、自動運転の導入に向け、成熟した事業機会をもたらす点が挙げられます。

先端技術調査を専門とする米調査会社ラックスリサーチは、ロボットタクシーは限定的な領域・エリア(ジオフェンス)内での運営が可能なことから、技術的にもライドヘイリングへの活用に適していると指摘しています。ラックスリサーチは、新しい報告書、『The Economics of Robotaxis(ロボットタクシーの経済性分析)』にて、ライドヘイリング向けのロボットタクシーの経済性を分析し、これらのサービスを使用するためのコストは、自家用車の保有よりも割高であるものの、従来のタクシーまたはライドヘイリングサービスよりも安価であると評価しました。

本調査を担当したラックスリサーチのリサーチディレクター、Christopher Robinsonは次のようにコメントしています。

『ロボットタクシーは現在すでに試験運用段階にあり、今日すでに複数運用が行われています。ロボットタクシーは、補助ドライバーなしで走行できますが、地理的条件や気象条件などの特定の運用条件に制約されるSAEレベル4の自動運転が必要となります。多くの初期段階の導入では、常に車両の制御ができる補助ドライバーが乗車していることが特徴でしたが、2020年には、遠隔操作と補助ドライバーの後続車両での走行モニタリングという組み合わせによりサポートされた、補助ドライバーなしのロボットタクシーが初めて導入されました。

ロボットタクシーサービス実現に必要な技術はすでに存在しているものの、自動運転の実用化は絶えず予定より遅れており、いまだに消費者が日常的に利用できるサービスではありません。今後、さらなる試験および改良が必要であるものの、ラックスリサーチは、ジオフェンスエリアでのレベル4の自動運転は、今後10年間で試験運用を終え、技術的に十分成熟すると考えています。そのため、これら自動運転車の商用化がもたらすインパクトや影響を現時点で十分理解することが重要です。』

ラックスリサーチの今回の分析では、ロボットタクシーサービスに必要なコストとして、具体的には1)車両コスト、2)充電コスト、および3)オペレーションコストに焦点を当てました。ま今回の調査では、米国(シカゴ、ニューヨーク)、英国(ロンドン)、および中国(上海)における年間総走行マイル数などのタクシーデータを活用することで、世界の主要都市における差異も鑑みています。

ラックスリサーチの調べでは、ロボットタクシーの経済性向上において、より安価なバッテリー式電気自動車やセンサースイートなど技術関連コスト削減よりも、車両の洗浄やメインテナンス、保険などのオペレーションコスト削減がより重要な手段であることがわかりました。ロボットタクシーサービスは経済的にはるかに優位であることから、既存の(ドライバーを必要とする)ライドヘイリング会社に対し、ロボットタクシーは破壊的な影響をもたらすことになります。しかしながら、ロボットタクシーは大方の予想よりもコスト高であり、また自動車所有はソーシャルステータスの意味合いを持つこともあり、自動車所有自体を代替することはないとラックスリサーチは指摘しています。

ただし、自動車メーカーは、ロボットタクシーがもたらす事業機会を完全に無視すべきではありません。ロボットタクシーの運営会社は依然として車両を必要とし、大手のロボットタクシー運営会社であっても自社で車両の設計・製造を行なっていません。自動車メーカーおよびサプライヤー企業は、技術力向上の加え、消費者が自動運転技術をどのように受け入れ利用するかを理解するためにも、ロボットタクシー導入への参加を検討すべきです。