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ストラタシス、サントリーがPolyJet方式3Dプリンター「Objet Eden 260VS」を採用

  • 2018-02-28 23:47
  • ACROFAN=金 炯根
  • hyungkeun.kim@acrofan.com
 Stratasys Ltd.(以下ストラタシス)の日本法人、株式会社ストラタシス・ジャパン(以下、ストラタシス・ジャパン)は本日、サントリーグループ共通の「ものづくり(研究・開発・生産・調達・ロジスティックス・品質保証)」業務を担うサントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社が、清涼飲料用のペットボトル容器開発においてストラタシスのPolyJet方式3Dプリンタ「Objet Eden 260VS」を採用したことを発表しました。これによりサントリーは、1回あたり1カ月半かかっていた試作期間を最短3日まで大幅に短縮し、完成度の高いペットボトルデザインを実現しました。

■限られた開発期間でペットボトルの完成度を高めるためのリードタイム短縮という課題

サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社は、サステナビリティと飲用時品質の向上の両立を目指す開発を進める中、年々進むペットボトル軽量化と、商品コンセプトを表現する高いレベルのデザインという2つの要素を、限られた開発期間の中で両立させるために、試作のリードタイム短縮を必要としていました。しかし、従来のペットボトル試作ではアルミ製の金型を外注していたため、金型メーカーとのやりとりや金属加工工程など、開発にかかるリードタイムが長くなり、試してみたいボトル形状があっても、時間的制約から断念せざるを得ないという状況にありました。

そこで、サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社は、リードタイム短縮に向け3Dプリンタ、コンピュータシミュレーションと切削加工機との比較検討を行いました。しかし、シミュレーションでは計算時間が長く、さらに、実際のボトルデータと計算結果の間に若干の乖離が見られました。一方、切削加工機を使った金型内製は、仕上がりには問題なかったものの、CAM(コンピュータ支援製造)や加工機の設定などに非常に工数がかかってしまうことが問題となりました。

■樹脂型で社内製作を可能にする「Objet Eden 260VS」で、試作回数の増加と1回あたりの精度向上を実現

比較検討の結果、サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社は、アルミ金型ではなく樹脂型を社内で製作できる、3Dプリンタを活用したデジタルモールド技術の導入を決定しました。多数ある3Dプリンタからストラタシス製品を選んだ理由として、同社 SCM本部 包材部の秋山高志氏は次のように述べています。「ペットボトルを製造する際の『ブロー成形(ボトルのような中空形状を作るためのプラスチック加工法)』工程では、樹脂型が成形時のヒーターの熱とエアー圧力に耐える必要があります。また試作といっても型の表面が十分に滑らかでなければ、ペットボトルの強度評価と外観デザイン評価に影響を与えてしまいます。このため、積層ピッチが細かく、後工程が簡易なストラタシスのPolyJet方式を選択し、樹脂の種類が豊富なことと造形スピードの速さから『Objet Eden 260VS』を選定しました。」

ストラタシスの「Objet Eden 260VS」導入により、サントリーは試作回数増加と1回あたりの精度向上という2つの効果を得ることができました。採用効果について、サントリーMONOZUKURIエキスパート株式会社 SCM本部 包材部 課長の加堂立樹氏は次のように述べています。「従来の金型による試作評価には1回あたり1.5カ月かかっていたものが、3Dプリンタ製樹脂型を使うことで、最短3日間にまで短縮することができました。さらに3Dプリンタ導入に合わせて、パッケージエンジニアにも3D CADを使える人材を育成しました。コンセプトデザイナーも3D CADを使うので、両者が試作の前に同じ3D CAD図面を用いて検討することにより、1回の試作評価の精度自体を非常に高めることができました。試作評価が最短3日で出来るので、試作品の実物とデータを持って、コンセプトデザイナー、マーケター、パッケージエンジニア、プロダクトエンジニアが、迅速で正確な情報交換をできるようになりました。」

ストラタシス・ジャパン 代表取締役社長 片山浩晶は以下のように述べています。「製品開発における時間やクオリティに対する挑戦は、近年さらに厳しくなってきています。そのような状況下で、サントリーMONOZUKUKIエキスパートをはじめとする日本の製造業は、コスト効率を高め、かつクオリティの高い製品を市場へ送り出すために日々尽力しています。単純な形状確認というフェーズから、ユーザーのみなさんはもう一歩先を見据えた3Dプリンタの活用方法を見出していくでしょう。まさにデジタルモールドもそのひとつです。より高い要求に応える3Dプリンティングソリューションとして、ストラタシスのもつ独自の技術やマテリアルが役立つと確信しています。」

この度、3Dプリンタによるパッケージ開発の納期短縮に成功したことにより、今後同社ではアルコール飲料や、海外も含めたその他の事業部門への展開も検討しています。さらには、ペットボトル/パッケージ試作開発だけにとどまらず、生産現場の工具や治具の製作など作業効率の向上にも注目しています。