acrofan

産業 経済 技術 ゲーム
社会 生活 自動車 メディア

東工大など、高温で安定化する新しいダイヤモンド量子発光体の作製に成功

  • 2017-12-26 18:22
  • ACROFAN=金 炯根
  • hyungkeun.kim@acrofan.com
東京工業大学 工学院 電気電子系の岩崎 孝之 助教と波多野 睦子 教授、産業技術総合研究所 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センターの宮本 良之 研究チーム長、物質・材料研究機構の谷口 尚 グループリーダー、ドイツ・ウルム大学のフェドー・イェレツコ(Fedor Jelezko)教授らの共同研究グループは、スズ(Sn)を導入したダイヤモンドを高温高圧下で加熱処理し、スズと空孔(V)からなる新しい発光源(カラーセンター)の形成に成功した。

イオン注入法により、スズを導入したダイヤモンドを高温高圧下に置き、スズと空孔が結びついたスズ―空孔(SnV)センターを作製。理論計算や低温計測により、SnVセンターは従来のカラーセンターの課題をすべて解決する可能性があることを明らかにした。今後、長いスピンコヒーレンス時間を実証することで、長距離量子ネットワーク通信に必要な量子メモリーへの応用が期待される。

安定な単一光子源として機能するダイヤモンド中のカラーセンターは、量子情報ネットワークへの応用が期待されている。だが、これまでに使用されていたカラーセンターは小さな発光強度、外部電界ノイズによる不安定な発光、さらに短いスピンコヒーレンス時間など問題を抱えていた。

研究成果は2017年12月22日(米国時間)、米国物理学会の「Physical Review Letters(フィジカル・レビュー・レターズ)」に掲載されました。

本研究は、国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST)さきがけ・研究領域「光の極限制御・積極利用と新分野開拓」(IV族元素を用いた固体量子光源エンジニアリング)およびCREST・研究領域「素材・デバイス・システム融合による革新的ナノエレクトロニクスの創成」(炭素系ナノエレクトロニクスに基づく革新的な生体磁気計測システムの創出)の支援を受けて行われました。

<研究の背景>

固体物質中に形成される量子発光体は量子メモリーなど量子情報ネットワーク応用にとって有望な系として研究が進められている。しかし、これまで報告されてきた半導体量子ドットやダイヤモンド中の窒素-空孔(NV)センターは、それぞれマイクロ秒程度に制限されたスピンコヒーレンス時間や全発光強度のうち量子光源として利用可能なゼロフォノン線からの発光が数パーセントのみでありその発光強度が小さいなどの問題があった。ごく最近、ダイヤモンド中のカラーセンターの1つであるシリコン-空孔(SiV)センターを100mKまで冷やすことでスピンコヒーレンス時間10ms(ミリ秒)が達成されたが、複雑かつ大規模な希釈冷凍機が必要であり、冷却が容易となるK程度の高い温度においては量子ネットワークに応用できるようなミリ秒以上の長いスピンコヒーレンス時間の達成が困難であるという問題があった。